めまい治療
「ぐるぐる回る」
「ふわふわする」
「立つとふらつく」
めまいの原因は
ひとつではありません
めまいは「どんな感じがするか」だけでなく、
「いつ・どんな時に・どのくらい続くか」を調べることが大切です。
めまいの原因には、内耳の病気、片頭痛に関連するめまい、血圧など全身状態によるもの、脳の病気、心因性など、さまざまなものがあります。
なかでも耳の奥にある内耳の前庭・三半規管は、体のバランスを保つ重要な器官であり、耳鼻咽喉科が専門的に診察する領域です。
日比耳鼻咽喉科では、症状の経過、耳の状態、聴力、眼振、頭の位置による変化などを確認し、「めまいの原因を見極め、それぞれの病気に合った治療を行うこと」を大切にしています。
めまいは「ぐるぐる」「ふわふわ」だけでは診断できません
以前は、
というように、めまいの感じ方から原因を分類することがよく行われていました。
しかし実際には、同じ病気でも人によって感じ方が異なります。
そのため現在のめまい診療では、
- 突然起こったのか、徐々に起こったのか
- 数秒、数分、数時間、それとも何日も続くのか
- 寝返りや起き上がりで起こるのか
- じっとしていても起こるのか
- 何度も繰り返しているのか
- 耳鳴りや難聴を伴うのか
- 頭痛や光・音への過敏を伴うのか
- 歩けない、しびれる、ろれつが回らないなどの症状がないか
などを総合して原因を考えます。
めまいを診断するうえで重要な「耳」
耳の奥には、音を感じる「蝸牛」と、体の回転や傾きを感じる「三半規管・耳石器」があります。
左右の内耳から送られる情報を脳が統合することで、私たちは姿勢や視線を安定させています。
このシステムのどこかに異常が起こると、実際には体が動いていないのに、
- 「周囲が回っている」
- 「自分が動いている」
- 「体がふらつく」
と感じることがあります。
耳が原因となるめまいの代表
- ・良性発作性頭位めまい症(BPPV)
- ・メニエール病
- ・前庭神経炎
- ・突発性難聴などに伴うめまい
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、めまいの診断では聴力検査や眼振検査など耳鼻咽喉科的な評価が重要であるとしています。(耳鼻科.com)
当院のめまい診療
「めまい止めを飲んで様子を見る」だけではなく、原因に応じた治療を
めまいの治療は、原因によって大きく異なります。
BPPVであれば耳石を動かす治療が有効なことがあります。
メニエール病であれば、薬物療法だけでなく生活習慣や発作を繰り返さないための管理が重要になります。
前庭機能が低下した後にふらつきが残っている場合には、前庭リハビリテーションが役立つことがあります。
また、長期間続くふらつきにはPPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)、めまいを繰り返す方には前庭性片頭痛が隠れている場合もあります。
当院では、めまいのパターンを確認しながら、それぞれの病態に応じた診療を行います。
当院ではこのようにめまいを診察します
発症の仕方を詳しく確認します
めまいでは問診が非常に重要です。特に、
- いつ始まったか
- 1回のめまいがどのくらい続くか
- どんな動作で起こるか
- 繰り返しているか
- 難聴・耳鳴り・耳閉感を伴うか
- 頭痛を伴うか
などを確認します。
耳と聴力を確認します
めまいに難聴、耳鳴り、耳のつまり感などが伴う場合には、内耳の病気が関係している可能性があります。
必要に応じて聴力検査を行います。
突発性難聴などを考える必要があります。早めの耳鼻咽喉科受診が重要です。
突発性難聴は、発症早期に治療を開始した方が聴力予後が良好とされているため、早めの耳鼻咽喉科受診が重要です。(耳鼻科.com)
眼振を確認します
めまいが起きると、本人には自覚できない特徴的な眼球運動「眼振」が現れることがあります。
眼振には、めまいの原因や障害されている場所を推定するための重要な情報が含まれています。
当院では赤外線カメラを用いて、時間をかけて頭の向きや姿勢を変えながら詳しく眼振を確認します。
「寝返りをすると回る」
「朝起き上がるときに回る」
「上を向いたときに突然めまいがする」
頭位・頭位変換によってめまいと眼振を確認し、どの半規管に耳石が入っているのかを判断します。
最も多いめまいのひとつ良性発作性頭位めまい症(BPPV)
BPPVは、耳鼻咽喉科で診るめまいの中でも非常によくみられる病気です。
耳の奥にある「耳石器」から小さな耳石がはがれ、三半規管の中に入り込むことで起こります。
- 寝返り
- ベッドから起き上がる
- 横になる
- 上を向く
- 下を向く
多くの場合、強いめまいは数秒~1分程度でおさまります。
通常、BPPVそのものでは難聴や耳鳴りは生じません。
めまい疾患の中で最も多くみられ、頭位によって誘発されることが特徴とされています。(耳鼻科.com)
BPPVは「薬だけ」ではなく、耳石を移動させる治療があります
■耳石置換法
BPPVでは、めまい止めだけで症状を抑えるのではなく、三半規管に入り込んだ耳石を、問題のない場所に移動する耳石置換法(頭位治療)があります。
2023年に日本めまい平衡医学会から発行された最新のBPPV診療ガイドラインでは、障害されている半規管に応じた以下などの治療方法が示されています。(金原出版)
当院でも、診察でBPPVと判断した場合には、病態に応じて耳石置換法などの理学療法を行います。
「どちらの耳の、どの半規管なのか」を確認してから治療することが重要です。
「めまい止めを飲んでも繰り返す」という方へ
BPPVでは自然に改善する場合もあります。しかし、耳石置換法には罹病期間を短くする効果が示されており、2023年版BPPV診療ガイドラインでも重要な治療として位置づけられています。(日本医事新報)
また、一度改善しても再発することがあります。
再び同じような頭位性めまいが生じた場合には、改めて眼振を確認し、その時点の病態に合わせて治療します。
メニエール病
「めまい+耳鳴り・難聴・耳のつまり」を繰り返す場合
メニエール病では、
- 回転性めまい
- 難聴
- 耳鳴り
- 耳がつまった感じ
などの症状を繰り返します。
内耳にあるリンパ液が過剰な状態である内リンパ水腫が病態に関係しています。これは特殊なMRIでの画像診断で証明できるようになっています。(大学病院にご紹介します)
聴力は発作に伴って変動することがあり、発作を繰り返すうちに聴力低下が残る場合もあります
そのため、単に「めまいが治ったか」だけではなく、聴力の経過も確認することが重要です。(耳鼻科.com)
メニエール病診療は2025年に大きくアップデートされました
日本めまい平衡医学会は2025年6月に、「メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2025年版」を発行しました。
5年ぶりの改訂で、治療に関するClinical Questionは従来の6項目から15項目へ拡充され、
・薬物治療
・生活指導
・心理的アプローチ
・中耳加圧治療
・前庭リハビリテーション
・難治例に対する治療
などについて最新のエビデンスが整理されています。さらに、前庭性片頭痛やPPPD、BPPVなどとの鑑別についても詳しく扱われています。
当院でも、症状や聴力の経過をみながら治療・指導を行います。難治例には中耳加圧療法も行っています。
前庭神経炎
突然激しいめまいが起こり、その後ふらつきが続くことがあります
前庭神経炎では、ある日突然、非常に強い回転性めまいが起こり、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
強い症状は徐々に改善しますが、その後、
- 歩くとふらつく
- 頭を急に動かすと不安定になる
- 動いているものを見るとつらい
などの症状が残ることがあります。
急性期の治療だけでなく、その後の前庭機能の回復を促していくことも重要です。
薬だけではない「前庭リハビリテーション」
めまいが治まったのに、ふらつきが残っている方へ
左右どちらかの前庭機能が低下すると、脳はその左右差を徐々に補正しようとします。この働きを前庭代償と呼びます。
しかし、前庭代償が十分に進まないと、
- 頭を動かすとふらつく
- 歩くと不安定
- 動くのが怖い
といった状態が長く続くことがあります。
このような場合に行われるのが前庭リハビリテーション(平衡訓練)です。
当院では、病気の種類や状態に応じて、必要な方には理学療法・平衡訓練についてご説明します。
最近注目されている慢性めまい
PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)
「検査では大きな異常がないのに、何か月もふらつく」
という方の中には、PPPD:Persistent Postural-Perceptual Dizziness(持続性知覚性姿勢誘発めまい)が含まれることがあります。
PPPDでは、
- 浮いているような感じ
- ふらつき
- 不安定感
などが3か月以上、ほぼ毎日のように続きます。
特徴的なのは、
- 立っている
- 歩いたり体を動かしたりする
- スーパーやショッピングモールなど視覚情報の多い場所
- 車や人の流れを見る
- スマートフォンやスクロールする画面を見る
などで症状が強くなりやすいことです。
日本めまい平衡医学会が採用している診断基準でも、3か月以上続く浮動感・不安定感・非回転性めまいと、立位・運動・複雑な視覚刺激による増悪が重要とされています。(J-STAGE)
PPPDは「気のせい」ではありません
PPPDは心理的な要因だけで説明される病気ではありません。
BPPV、前庭神経炎、メニエール病などのめまいをきっかけとして、その後、脳が姿勢・視覚・前庭情報を処理する方法が変化し、慢性的なふらつきが続くことがあります。
治療には、病態に応じて、
・前庭リハビリテーション
・薬物療法
を組み合わせることがあります。(J-STAGE)
「めまいは治ったと言われたのに、ずっとふらふらする」という方では、こうした病態も考える必要があります。
前庭性片頭痛
「頭痛の病気」がめまいを起こすことがあります
近年、めまい診療で非常に重要になっている病気の一つが前庭性片頭痛(Vestibular Migraine)です。
片頭痛のある方に、
- 回転性めまい
- ふらつき
- 頭を動かしたときのめまい
などが繰り返し起こることがあります。
必ずしも、めまいと頭痛が同時に起きるとは限りません。
- 5分~72時間続くめまい発作を繰り返す
- 片頭痛の既往
- 片側性・拍動性の頭痛
- 光がまぶしい
- 音がつらい
- 視覚性前兆
2025年の日本めまい平衡医学会誌でも、現在の前庭性片頭痛診断基準が整理されています。(J-STAGE)
「めまいの検査では異常がない」と言われた方でも、頭痛歴を詳しく確認することで診断につながる場合があります。
めまい+急な難聴は早めに受診してください
突然、
- 片方の耳が聞こえにくい
- 耳鳴りが急に強くなった
- 耳がつまった
- そしてめまいがする
という場合は、突発性難聴などの急性感音難聴を考える必要があります。
突発性難聴では治療開始が早い方が聴力予後が良いことが報告されているため、できるだけ早い耳鼻咽喉科受診が重要です。(耳鼻科.com)
「めまいだけだから」と数日様子をみず、聞こえの変化がある場合は早めにご相談ください。
このようなめまいは救急受診を
ほとんどのめまいが脳卒中というわけではありません。
しかし、小脳や脳幹の脳梗塞・脳出血などでもめまいやふらつきが起こることがあります。
特に、めまいと同時に次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 顔や片方の手足がしびれる・動かしにくい
- ろれつが回らない、言葉が出ない
- 突然ものが二重に見える
- 支えなしでは立てない・歩けないほど急にふらつく
- 意識がおかしい
- 今まで経験したことのない突然の激しい頭痛
このような場合は、通常の外来受診ではなく、救急車を呼ぶことを検討してください。
厚生労働省および日本脳卒中協会も、突然の麻痺・言語障害・複視・歩行不能などは脳卒中を疑う重要な症状として、速やかな救急受診を勧めています。(公益社団法人 日本脳卒中協会)
症状から考えられる主なめまい
| めまいの起こり方 | 考えられる代表的な病気 |
|---|---|
| 寝返り・起き上がりで数秒~1分ほど回る | 良性発作性頭位めまい症(BPPV) |
| 数十分~数時間のめまいを繰り返し、難聴・耳鳴り・耳閉感を伴う | メニエール病 |
| 突然強いめまいが起こり、数日間続く | 前庭神経炎など |
| めまいとともに突然聞こえが悪くなる | 突発性難聴など |
| 数分~数日間のめまいを繰り返し、片頭痛歴や光・音への過敏がある | 前庭性片頭痛 |
| 3か月以上ふらつきが続き、立位・歩行・視覚刺激で悪化 | PPPD |
| 立ち上がるとクラッとし、横になると改善 | 起立性低血圧など |
| めまいと麻痺・ろれつ障害・複視・激しい頭痛などを伴う | 脳卒中など中枢性疾患 → 救急受診 |
※同じ症状でも複数の病気が考えられます。症状だけで自己診断することはできません。
めまいの治療は原因によって違います
BPPV
耳石置換法・頭位治療
薬で症状を抑えるだけではなく、原因となっている耳石を移動させる治療を行います。
メニエール病
生活指導+薬物療法+経過観察
めまい発作だけでなく聴力の変化も確認しながら治療します。難治例では専門的な治療が必要になる場合があります。
前庭神経炎・前庭機能低下後
必要に応じて前庭リハビリテーション
脳の前庭代償を促し、ふらつきや歩行時の不安定感の改善を目指します。
PPPD
前庭リハビリテーション・薬物療法などを組み合わせて治療
慢性的なめまいに対し、病態に応じた治療を行います。
前庭性片頭痛
片頭痛の治療も含めて考えます
めまいだけでなく頭痛や光・音への過敏などについても確認します。
「めまい止め」だけでは改善しないめまいがあります
強いめまいや吐き気がある急性期には、症状を和らげる薬が必要になることがあります。
一方で、めまいの原因そのものによっては、薬を飲み続けるだけでは十分ではありません。
例えばBPPVでは耳石置換法が重要であり、前庭機能低下後の慢性ふらつきでは前庭リハビリテーションが重要になります。
原因を診断して「そのめまいに必要な治療」を選択することが大切です。
よくあるご質問
めまいは耳鼻咽喉科で診てもらえますか?
はい。
内耳には三半規管・耳石器というバランスを感知する器官があるため、耳が原因となるめまいは耳鼻咽喉科の専門領域です。
聴力や眼振などを確認しながら診察します。
一方で脳疾患などが疑われる場合には、脳神経内科・脳神経外科など適切な医療機関での診療が必要になります。
めまいがなくなってから受診しても分かりますか?
受診時にめまいが治まっていると診断が困難な場合が多いです。しかし、発症時の症状や経過、聴力、眼振所見などから原因を推測できることがあります。
「いつ」「どんな時に」「何分くらい」起こったかを覚えておくと診断の参考になります。
寝返りするとめまいがします。薬を飲めば治りますか?
BPPVの場合、薬物療法だけではなく、耳石を移動させる耳石置換法が有効な場合があります。
まずどの半規管が原因かを確認する必要があります。
めまいはストレスが原因ですか?
ストレスがめまいを悪化させることはありますが、最初から「ストレスによるもの」と決めつけるべきではありません。
BPPV、メニエール病、前庭性片頭痛、PPPDなどを含め、原因を検討することが重要です。
めまいが長引くと治らないのでしょうか?
長引くめまいでも原因によって治療方法があります。
特に近年は、前庭リハビリテーションやPPPDなど、従来「原因不明のめまい」とされやすかった慢性めまいについても、診断・治療方法が整理されてきています。(金原出版)
脳のめまいかどうか心配です。
めまいだけでは判断できません。
突然の麻痺、しびれ、ろれつ障害、複視、歩けないほどのふらつき、激しい頭痛などがある場合には脳卒中の可能性があるため救急対応が必要です。
そのような症状がなければ、耳鼻咽喉科で聴力・眼振などを調べることが診断の第一歩になります。
めまいでお困りの方へ
めまいには、
- すぐに治療した方がよいもの
- 耳石置換法で改善が期待できるもの
- 聴力を継続してみる必要があるもの
- リハビリが必要なもの
- 片頭痛との関連を考えるもの
- 長期間付き合いながら治療するもの
があります。
「めまい」という一つの症状でも、その原因と治療方法は同じではありません。
日比耳鼻咽喉科では、症状の経過・聴力・眼振などを確認し、原因に応じためまい診療を行っています。
このような症状でお困りの方はご相談ください。
最新の診療ガイドラインに基づくめまい診療
めまい診療は近年大きく進歩しています
日本めまい平衡医学会では近年、
- 2021年 前庭神経炎診療ガイドライン
- 2023年 BPPV診療ガイドライン
- 2024年 前庭リハビリテーションガイドライン
- 2025年 メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン
が相次いで発行・改訂されています。(日本めまい平衡医学会)
さらに、これまで「原因不明」「心因性」とされることもあった慢性めまいについても、PPPDや前庭性片頭痛など新しい疾患概念が整理され、診断と治療が進歩しています。
当院でも新しい知見を取り入れながら、めまいの原因に応じた診療を行っています。











